第19章 【北】marble★
チリーン・・・
チリーン・・ ・ ・
縁側の天井の梁から釣らされた、南部鉄の風鈴の凛とした音が静かな部屋に響く。
「あら、いらっしゃい。信介のお嫁さんかい?」
「お、およ、お嫁さん!?初めまして!!!と申します!!!!」
「ばあちゃん。が困ってるやろ。」
初めて足を踏み入れた北さんのお家は、おばあちゃんの代から住んでいると言う日本家屋。築年数が醸し出すずっしりとした雰囲気。隅々まで片付いた部屋は北さんらしいなぁってちょっと思う。
居間でお茶を飲んでいたおばあちゃんと早速初対面を果たし、私はしどろもどろになりながら頭を下げた。
(お嫁さん!!、、、あかん!どうしよ、、、めっちゃ顔熱い、、、まだ付き合い始めたばっかりやのに。)
女の子なら誰でも憧れるであろうそのワードに、緊張しながらも頭の中に幸せが充満する。
しかし、隣に立つ北さんといえば、相変わらずの鉄仮面ぶり。この人はバレー以外でも緊張せんのやろか、、、と、疑問符が浮かぶ。
「俺ら二階におるから。」
「ほなお茶とお菓子持って行き。今用意するさかい。」
「うん、ありがとう。」
(そう言えば、おばあちゃん、北さんと目がそっくりや、、、)
初めてキスをしたあの日から私たちは恋人同士になった。
恋人とは言っても、実際は部活が忙しくてデートなんか全然してへんし、一緒に帰るくらい。それすら私の家が学校からめっちゃ近いせいで、2人っきりの時間なんか僅か10分程度やった。
おばあちゃんが用意してくれたカップのアイスと麦茶、お煎餅がのったお盆を持って、私たちは階段を登り二階に位置する北さんの部屋に向かう。
北さんの後ろを歩いてるだけで、ドキドキして仕方ない。いつものジャージとも制服とも違う、紺色の短パンに白い半袖のシャツを合わせた、少し大人っぽい私服姿に自ずと胸はときめく。
(あぁー!もう!!ドキドキうるさい、、、!)
"俺んち来ぉへん?"
月曜日にそう誘われてから今日まで、病気か!ってくらい毎日ドキドキが止まらへんくて仕方なかった。
(男の人の家なんて初めてやもん、、、緊張しんほうが無理やって、、、)
暑さのせいなのか緊張のせいなのか。
私は汗ばむ手をギュッと握った。