第1章 パーティー
「ナツキ?」
「!…ぁ…ご、ゴメン…あの…それは…。」
見とれてしまっていた。
「…足にも同じような痣がいくつもありますね。」
フォーマル手袋を外し、私の足を持ち上げ、セバスチャンは自分の膝に乗せた。
「あ、あの……き、汚いので…あまり…そのようなことは…。」
「かまいませんよ。」
敬語は無しで。そう言っているのに、2人とも敬語が抜けない。
「これは、誰にやられたものなんですか?」
「こ、これは……。」
「……坊ちゃん。」
「!…」
「盗み聞きとは、よろしくないご趣味で。」
「……気づいていたのか。」
「ええ。」
ドアを開けると、ファントムハイヴ伯爵が立っていた。セバスチャンは私の足をおろした。
「別に趣味などではない。」
「お休みになられたのかと思いました。」
「フンッ…。」
「…」(気づかなかった…。伯爵がいたなんて…。だから…セバスチャンは敬語じゃなかったんだ…。)
「…で、その痣は誰にやられたものなんだ?」
パーティーの時とは違い、敬語では喋っていない伯爵。
「…い、言えません…。」
「言えない…だと?」
大きめの真っ白なシャツを着ている伯爵。黒い眼帯は相変わらず付けている。私の正面のソファーに腰をおろし、足を組んだ。
「っ…。」
「…何を恐れている?」
「!…」
「その痣を付けた奴の名を言ったら、何か変わるとでも言うのか?」
「…」(確かに…伯爵の言うとおりだ。父の名前を言って、何が変わる…?私にとって、あの人はもう父親なんかじゃないのに…。)