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お気に入り 【黒執事】

第8章 過去


*(過去)*


「お母様、このお花、綺麗ですね!」

「ええ。そうね!とても綺麗だわ!」


私の母は、ユアナ・エミルという。私はエミル家の長女だった。

兄弟はいなく、一人っ子。


「お父様、このお花、プレゼントです!」

「おお!これを?ありがとな!」


頭を撫でられた。その時、私は5歳。

幸せな家庭を送っていた。でもある日……。


「へ、ヘンリー様…!どうかお許しを…!」

「無理に決まってるでしょ?俺の洋服を汚したんだ。」


家にヘンリー家の長男、カミル・ヘンリーがやってきた。


「このような家、焼き払え!!」

「お、おやめください!」


父は何度も謝った。でも、許してもらうことができなかった。父も母も逃げた。でも、捕まってしまった。


「お父様!お母様!」

「逃げなさいナツキ!」

「!…」

「走って!!」


あんなに怖い顔をした2人を見たことはなかった。私は走った。父と母がどんなに痛がっていても、どんなに声をあげても…。泣きながら走った。

かなりの時間走り、疲れ果てていた。雨が降り、寒かった。凍え死にそうな時だった。


「大丈夫?」

「…」


ゆっくりと顔をあげると、そこには、ブルネットの髪の毛で、とてもイケメンな男性が立っていた。私から見て右目の下にほくろがあった。


「ぁ…っ…。」

「…このままだと、君は死んでしまうよ?」

「っく…。」


泣いてしまうのを堪えていた。でも無理だった。雨に濡れて、涙なのか雨なのかわからなくなっていた。


「君、帰る家は?」


私は首を横に振った。


「じゃあ、私の屋敷に来るかい?」
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