第6章 嫌な予感
それはアロイスの執事さんだった。黒髪のメガネをかけた人。
「!…す、すみません…!」
「いえ、こちらこそ、いきなり話しかけてしまって、申し訳ございませんでした。」
「い、いえいえ…!えっと…どうなさいましたか?」
私は立ち上がり、そう聞いた。
「…旦那様に、少し席をはずすように言われました。この屋敷をうろついていたら、偶然ここにたどり着いたものですから…。」
「あ…そうだったんですか…。」
「それより…。」
「…?」
私の手をとり、指先を見つめた。
「ここ、血が出ていますよ?」
「!…え…あ…ホントだ…。」
紙か何かで切ってしまったのだろう。夢中でそんなことにも気づかなかった。アルバムや本に血が付着していないか心配になった。
「す、すみません…気がつかなくて…。」
「…」
「あ…あの…?」
すると、その人は私の指先を舐めた。
「!?…」
音があまりにも近くで聞こえ、顔が熱くなっていくのがわかった。
「あ、あの…!!//////」
思わず大きな声を出してしまった。
「失礼いたしました。」
「い、いえ…//////」
熱を持った顔を冷ますのには時間がかかる。
悪魔は皆こうなのだろうか…。
金色の瞳が真っ赤に変わっていくのが見えた。
「…あ、あの…すみません…まだ…あなた様のお名前をご存知ないのですが…。」
「クロード・フォースタスです。」
「あ…えっと…ナツキ・ヘンリーです。」
すると、真っ赤な目が金色に戻っていった。