第18章 噛みつく
「…どいて。」
「どうしてですか?」
「出かけてくるから。」
「…ですが、坊ちゃんに」
「シエルの考えていることがわからない。」
「…」
「昔、一緒に過ごしていた記憶が残っていたとしても、私にはその記憶はないし、もう死んでも…別にいいと思ってる。魂を求めているだけの悪魔達と一緒にいて、死んで、魂を食べられるくらいなら、アンダーテイカーに魂を返却したほうがマシ。」
口から出るたくさんの言葉。
「…」
「…なら、私があなたの、性格、人間性……魂を除く全てのものに惚れた。と言ったら…どうなさいますか…?」
「!…」
「フフッ…私が、あなたの魂だけを欲しがっているとでもお思いですか?」
「…当たり前。」
私はゆっくりと体を起こした。
「…どいて。」
顔だけ上に向け、そう言った。あと少しでも動けば、唇が触れそうな距離。
「…フフッ…。」
セバスチャンは笑ったあと、私にキスを落とした。
「あなたが、何を勘違いしているのか知りませんが、私はあなたの魂が欲しいだけの"あの悪魔"とは違います。あなたの性格、人間性、表情、動き……全てにおいて惚れています。」
「!…」
「…悪魔が…人間に恋をするなど、考えもしませんでした。」
困ったように微笑むと、セバスチャンは私から離れ、屋敷に戻っていった。