第17章 1日
「…ごちそうさまでした。」
手を合わせ、そう言った。
「ナツキ、僕について来い。」
「うん。」
そのままシエルについて行った。
「ここだ。その山になっている書類を片付けてくれ。わからないことは僕に聞け。」
「わかった。」
ヘンリー家にいた時に隠れて勉強をしていた時期があり、大抵のことはわかる。
「…」
書斎で黙って仕事を手伝っていた。
そして1時間もしないうちにシエルが潰れた。
「…ナツキ。」
「ん?」
「…お前は…嫌にならなかったのか?」
「え…?」
「ヘンリー家にいたあの時間、逃げ出そうとは思わなかったのか?」
「……逃げ出そうと、したことはあるよ…。でも、捕まって酷く暴力を振るわれるだけだったから…諦めてた…。」
「……そうか…。」
「…」
また書類にペンを走らせた時だった。
「もっと早く、見つけられれば良かった。」
「…?」
「パーティーを、もっと早くに開けば良かったと思った。…いや…パーティーなんか開かなくても、アイツに迎えに行かせれば良かったんだ。」
アイツ…というのは、多分セバスチャンのことだろう。
「…」
「…すまなかった…。」
「!…あ、謝らないで…?シエルは何も悪くないから…。」
「…」
そう言ったけど、シエルは納得いっていないようだった。
しばらく沈黙が続いた時だった。ドアがノックされ、ワゴンを押してセバスチャンが入ってきた。