第14章 狂った執事
「っ…。」
昨夜、私はこの執事に抱かれたのだ。何度も言うようだが、抱かれたのだ。
「動けない…っ…!」
「お昼頃に目を覚まし、私の名前を大きな声でお呼びいただけるなんて…光栄です。そして何より、とても可愛らしい…。」
「からかわないでください…!」
セバスチャンの様子がおかしい。いつも以上に過保護で、優しい。しかし、今まで以上にそんなことをされては、本当に困る。
「っ…はぁ…。」
自殺しようとした時、彼は私を生かしたのだ。面白くないから。そんな理由で…。
「セバスチャン…。」
「はい。」
「起き上がりたい…。手を…貸してくれませんか…?」
「かしこまりました。」
セバスチャンに力を借り、なんとか起き上がることが出来た。
「…」
「はぁ…。」
ニコリと微笑んだセバスチャン。きっと、今の彼に何か言ったところで、何も思わないのだろう。
「…」(とにかく、今の状態じゃ仕事なんかできない…。)
私は痛い腰をなんとか動かし、シエルのところまで行った。いつもなら5分もかからないはずなのに、今日は10分以上かかった気がする。
「シエル…。」
「ナツキ、朝から大きな声を出して…どうした?」
「な、なんでもない…。それより……今日…仕事…お休みしたくて…。」
「それは別にかまわないが…どこか痛いのか?姿勢がおかしいぞ?まるで老人だな。」
「うっ…ちょっと…体を痛めちゃって…。」
「そうか…まぁ、安静にしておけ。」
「あ、ありがとう…ございます…。」
とりあえず私は自室に戻った。