第2章 晋助目線
蹴飛ばしていたタオルを塗らし、〇〇の右足首に再びあてる。だいぶ腫れが引いた様子に安堵する。
枕元の水を一息で飲み、〇〇にも渡す。
ふと、土産を思い出し、何か言いかけたのを手で制して包を渡した。
藤の花を模した簪に、〇〇は感嘆の声を上げる。
男が女に簪を贈る意味も、藤の花の花言葉も、こいつは知っているのだろうか。
万斉の「晋助もすみに置けないでござるなぁ」と言った横顔を思い出し、苦笑する。
〇〇は、手櫛でまとめた髪に、簪を挿している。受け取った簪を付ける意味も、知っていてなのか。
そして、言いかけた言葉を促した俺を見つめて、微笑んだ。
「晋助、おかえりなさい」
…まったく、どうしてこいつは、こんなにも簡単に俺のペースを乱すんだ。
煙管を盆に置き、〇〇に近寄る。
「言っとくが、煽ったのはお前だ」
この腐った世界を俺が壊そうが、勝手に壊れようが、こいつだけは守りぬこう。
そして世界が新しい朝を迎えるなら、その朝日を浴びる時、横にはこいつに居てほしい。
神様とやらがいるなら、俺の願いは聞いてくれるだろうか。
いっそ、お百度参りでもしてみるか。
なぁ?〇〇。