第20章 いくつもの”あい”を君と
数年後、葵と謙信は庭を歩いていた。
あの時孕んだ子は、幼児まで育っていた。
葵「謙信様聞きましたよ。
この前も藍と刀をふったとか・・・」
謙信「奴がお前と寝ると言ってきかぬからだ」
藍とは、謙信と葵の間に生まれた娘の名前だ。
第一子にはこの名前をつけようと、
かねてより二人で考えていた名だった。
葵「どうせ最後は三人で寝るのですから、
争わずともよいでしょう?」
謙信「そうはいかぬ。
お前を俺がただ愛したいときもあるのだからな」
葵「それは夜伽の話ですか?」
謙信「・・・そうだ・・・」
葵「謙信様はお子より、
我慢がきかず・・・しょうがない人ですね」
葵は困ったように笑う。
謙信「・・・お前にだけだ」
謙信は不貞腐れたような顔をする。
葵「でもしばらくはまた我慢してくださいね」
謙信「それは・・・まさか」
葵「はい二人目がここに宿りました。
父親は言わなくてもお分かりになりますよね?」
謙信「当たり前だ。俺がまいた子種だ」
謙信は嬉しそうに葵を抱きしめる。