第15章 裏切り者と愛しき者
謙信「聞いていれば先ほどから聞くに堪えんな・・
よほどお前らはこの娘が憎くて仕方ないと見える」
紫苑「そうだ・・・今すぐそいつの命渡してもらおうか」
謙信「それはできぬ相談だな」
紫苑「何だと?」
謙信「あいにく俺はこの娘が欲しくてたまらんのだ。
というよりこの娘はすでに俺のものだ。
俺のものを易々とお前らに渡すつもりはない」
紫苑「本気でその裏切り者を側女にする気か・・・
人間・・・」
謙信「側女?それは違うな・・・
葵には俺の伴侶になってもらう」
紫苑「はっ・・・
その裏切り者を嫁にするなんて、
物好きだな、あんた」
謙信「・・・物好きはお互い様だ」
戦狂いの自分しか愛せない葵の姿を思い出し、
謙信はそう答える。
紫苑「ところでいいのかい?
後ろがずいぶんと隙だらけだけど?」
紫苑はにやりと笑みを浮かべ、
謙信にそう言い放った。
謙信「何・・・!?葵!!」
葵「・・・っ」
謙信が叫んだのと葵が斬られたのは同時だった。
謙信「葵!!」
葵は落馬し、その場に倒れこんだ。
その姿は前に一度斬られた時とは違っていた。
辺りに謙信を含む越後武将の葵の名を叫ぶ声と、
同じ女の子が斬られたのを見てしまった舞の悲鳴が響く。
葵と謙信の様子を、
唖然として見つめる安土武将たち、
そして倒れる葵を、
笑いながら見つめる夢魔たちの姿があった。