ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第126章 彼と彼女が取り戻した日常
全ての始まりを遡るなら今から3カ月前に成る
息子の一人であるイルミに僅かな違和感を覚えたのはいつだったか
息子達は各々個性的に成長したがその中でも異質なのは長男であるイルミだった
親子間に日常会話は殆ど無い
これは家業が特殊だからという理由の他イルミという個性がそうであったからだ
何物にも揺れる事の無い感情はまるで精密な機械を思わせるが飄々とした態度の奥で思慮深く虎視眈々と仕事をこなす
息子をそう育ててしまったのは長男故の過度な訓練や教育も一端であるが
イルミは元々感情表現に乏しかった様に思う
そんなイルミの通常と言えば仕事ノルマをこなし、後は鍛練に時間を裂いている事で全くと言っても過言では無い程外界に接触が無かった
其ほどに家業以外に無関心だったのだ
しかし近頃のイルミはノルマを捌きながら休暇の合間に留守を作る事が増え
鍛練の時間は確保しながらも他の兄弟に接する雰囲気は微々たるものながら無機質さが抜けている
良い歳をした成人の息子に変化を及ぼすとするならば色恋にまつわる事だろうと察するのは容易であった
幸い母親であるキキョウは滅多に顔を合わせず自身を語らない息子の変化に気付いていない
知れれば過干渉に成る事は避けられず、干渉を嫌うイルミが何を仕出かすかを考えると穏便に済ませた方が良いと結論付けた
慎重に成らざるを得ない息子の危険思想から目を逸らしながらも
イルミ自身が以前ゲイだと公言していた事も相まって秘密裏に身辺調査を行て見えた実態
下手な尾行や監視は逆効果であるのでイルミの不在を狙い収集させた資料から身元不明の娘の存在が浮かび上がったのだ
身元不明というのは流星街出身者には良くある事なのでその辺りで拾った性処理相手かペットかと思っていたのだが
この時点でイルミの発言に辻褄が合わなくなる
ゲイであるという虚偽は疑惑を色濃くさせた
時間を掛けて調べてみれば何の変哲も能力も無い娘と息子はまるで恋人の様に穏やかな関係を築いていたのだ
職業を差し引けば自身も人の親
息子の人生において成長を感じ欠落した部分を持つイルミが、と感慨深く思う反面、ゾルディック当主として妻の意見を取り入れるなら良血の嫁をと思う他無かった