ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第19章 夏を見る1年半年
元の世界に戻って1年半が過ぎた
何をしていても彼女の事を考える日々を怪我で表すなら目の前の首無し死体に成るだろう
なんて思考すら馬鹿馬鹿しい
自身が人の命を奪った今この時彼女は真反対の平和な世界で何をしているだろう
元気だろうか……笑っているだろうか……
もしかしたらもう自身を忘れて知らない誰かに恋をしているだろうか
…………いや、そんなの考えない
考えたくもない……………
自身は何も変わらない
見合い話は断り続け積極的にしつこい母親に
「俺ゲイなんだ。」
と話した所、卒倒し寝込んでいてうんざりだった冊子は届かなく成った
勿論ゲイというのは嘘だが鬱陶しい話しが遠退くなら其れで良い
父親は然り気無く探りを入れて子孫だけでもなんて話して来たが興味が無いの一点張りで通している
要らない。
彼女以外必要無い。
会いに行こうかと何度も足を向けた蜘蛛のアジト
踏み出さないのは彼女の幸せを踏みにじってしまうかもしれない恐怖
仮にまだ誰にも恋せず彼女が過ごしていて自身と再会したならば別れの時に再び泣かせる事に成る
何より次は自身も耐えられそうに無い
其れでも彼女の元へ行こうかと何度も何度も繰り返し思うのだ
「………さ、仕事仕事……。」
春から夏は繁盛期
暗黙の領域を侵して毎日15件程の仕事を請け負い仕事に明け暮れる日々
ろくに睡魔も取らず食事も簡易で済まして家にも帰らない
苦痛なんて無い
寧ろ彼女の事を考えない時間が多くなり其れが気休めだと解っていても仕事に向き合うと忘れられる
人殺しを依頼する依頼者がいる限り暗殺家業は動き続く訳だが
自身に殺される奴は半分八つ当たりが混ざっている辺り不憫に思ったりする
じわじわと鳴くセミの声は彼方の世界と変わらないのに此方のセミは妙にカラフルで彼女が見たなら叫び声を上げるだろう……
なんて見上げた空は真っ青な夏の色