第89章 彼の波に溺れる

執拗に刺激を続ける指先に甘い快楽だけが脳を支配して

甘美な刺激に身を捩れば未だ取り払われる事の無いシャツがもどかしい

背中から首筋へ伝った唇は耳朶を含みそれすらも焦れったい快感に成って身体の中が疼いた


「あぁっ………あ……んんっ……」


懸命に手で抑えても漏れ出る自身の声は自分の物とは思えない程甘ったるく


羞恥とは裏腹に過敏に反応する身体はビクビクと肩を震わせ
我慢をしている意識は無くても私の身体は彼を待っていたのでは……なんて思わせた


胸の先をしなやかな指が緩く引っ掻き続け耳穴には舌が動く生々しい水音が注ぎ込まれて思考が鈍く成って行く


どれだけそうされていたのか

胸を離れた手は先程よりも幾分も熱を帯び彼もまた体温を上げている事に胸がぎゅっと締め付けられる


そろそろと降りた手はパジャマのズボンへと侵入しゴムは逞しい彼の腕を容易に迎え入れた


焦らす様に太腿を撫でられながらも脚の間に脚を挟み込まれて簡単に開く隙間

ショーツ越しに敏感な場所をなぞった指先に身体は待ち望んでいたかの様に甘い痺れを走らせる


しっとり濡れたショーツは肌に引っ付き彼の動きを鮮明に感じ

只与えられるまま快楽にビクビクと身体を震わせているとズボンごとショーツを取り払われ身体を反転させられ


荒い呼吸をそのままに視界に映ったのは無機質な顔に似合わない熱を籠らせた不適な瞳だった


途端に心臓が跳ね上がる


先程迄私の肌に触れていたのは紛れもなく彼で

このまま私達は肌を重ねるのだと思えばどうしようも無く愛しくて溶けてしまいそうな程幸福の波が襲う


じっと視線を合わせたまま太腿を撫でる彼の手が脚の間に指を這わせそのままツプリと沈められ弾ける様な刺激にあられも無い声が漏れた


彼の腕にしがみ付き自身から発されるはしたない水音から耳を背けて数十分


的確にじわりじわりと責め立てる快感は次第に強く成り
必死に彼を見上げれば彼は酷く妖艶に口元を歪めた


「もう平気そうだね………挿れて良い？」


「……んんっ…は……い………」



私の頷きを確認した彼はいつ準備していたのか実に素早く避妊具を取り付ける


私はその光景から目を逸らして布団をぎゅっと抱き締めた


未だ彼の裸体に慣れる事は無く馬鹿みたいに心臓が煩い