ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第89章 彼の波に溺れる
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私達はその後シャボン玉を存分に楽しんだ
普段ホテル等で過ごしている時ならばあれだけ熱中する事は無かっただろうと思う
………何もする事が無い時間………感謝………
その後夕飯と入浴を済ませて私達は昨日同様早めにベッドに入った
昨日との違いを挙げるなら外は昼間の雷雨から少し落ち着いてシトシト雨を降らせている事
そして私が山の環境にすっかり慣れて怯えていない事くらいだ
馬車中に響く控え目な雨音に耳を傾けながらまだまだやって来ない睡魔の気配に何気無く目を開いて事態が把握し切れず固まってしまった
「…………っ!?!?」
隣で同じ様に眠る体勢に成っていた筈の彼がいそいそとシャツを脱ぎ上半身のしなやかな筋肉を露出していたのだ
暫く固まったままガン見してしまっていた私だが
見ているのもどうかと頭に過り慌てて背中を向けて壁を見詰める
正直何が起きているのか解らないが不意打ちの芸術的筋肉に心臓が跳ねる
この肌寒い季節にまさか暑いなんて事は無いだろう………いや………しかし………あれだけの屈強な身体なら代謝も良いだろうし………やはり暑い……のか………?
彼は未だ着替える際等私に配慮して別の場所に移ってくれているし不必要に露出しているとはとても思えない
しかし何故今のタイミングで唐突に脱いだのか…………
もしかしたら高貴な彼の肌にパジャマの質が合わず痒いのか…………
……………火傷もしない彼………たかが布ごときに負けたりするだろうか
なんなら山芋を肌に塗っても平然としていそうだ…………
なんて考えながらも物音に全神経を集中させてしまう
上半身とは言え肌を露出した彼が直ぐ隣に居るのだと思うと気が気では無く鼓動が騒がしい
布が擦れる音が聞こえた後にギシリとスプリングが弾みバサリと彼が布団に潜ったのが解った
……………パジャマがお気に召さず違う物にお召し変えしたのだな………
なんて少々落ち着きを取り戻し始めた鼓動は
「沙夜子………」
先程よりもけたたましく早く脈を打ち始める