ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第15章 アパートを思った一年
元の世界に戻って1年が過ぎた
季節の変化は彼女の世界より少ないが其れなりに気温が下がりこの世界にも冬は来る
家業は繁盛期を過ぎて俺は一年ぶりに強制休暇を取らされた
特に疲れてもいないしミスも犯していないが祖父からの通告に抗うのも面倒だった
突然休暇にされたって特段する事は無く身体を鍛えるべく独房に行くと暗い部屋の隅から物音が聞こえる
「イルミ兄様!」
「………カルト何してるの?」
部屋の隅から歩み寄った弟は自身とよく似た黒髪を揺らして頭を下げた
「稽古に励んでおりました」
「ふーん。久々に手合わせでもする?」
「…………お手柔らかにお願いします」
血の繋がったまだ幼い弟
しかしその表情には緊張が見て取れた
兄弟ですら自身を恐れる
幼い頃から暗殺指導し、血反吐を吐かせれば当然の反応だろうがそれは普通の家庭環境では無いのだと知った
以前から自身の一家は特殊だと気付いていたし一般家庭とは漠然と違うとは思っていたが自身の知り合いに其れを指摘する人間等皆無で、そんな事を考えた事すら無かった
彼女と弟との会話はもっとフランクで他愛も無い
それが普通なのだとしたらゾルディックという家はどれだけ異質なのだろう