• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第13章 想いを馳せる3ヶ月




_________"



小高い丘の上に建つ洋館は随分と和な場所にあった

洋館の直ぐ裏には大きな湖が静かに広がっていて

緑の風を感じながら背の高い木に登った


枝に手を掛けて身体を持ち上げると其処には鳥の巣があった

自身の存在に懸命に鳴き声を上げて嘴を開く小さな雛


「……ご飯なんて持ってないよ。」


余程空腹なのか必死に見える雛鳥達に何故か緩んだ頬

そんな時自身の姿を確認したのか一羽の鳥が自身目掛けて飛んできた

すんなり避ける事は出来るが執拗な攻撃に親鳥なのだと理解した


「何もしないよ。」


なんて言いながら程よく辺りを見渡せ目立たないポイントに辿り着く


輝く湖面と緑の森は酷く自身の胸を締め付けた




…………以前なら自身の居場所がバレぬ様に騒ぐ雛鳥を殺めていた筈だ


何故そうしないのか


(…………小さな生き物は守らないと………か。)



仕事から、家からは逃げられない

俺はずっと昔から薄汚れているけれど

こんな今の俺なら少しは彼女に近付けるだろうか


沙夜子、俺の世界にも綺麗な場所を見付けたよ


沙夜子に見せたいな………北海道で見た湖に似ていて湖畔には花も咲いてる


今何をしてるの……?
どうか泣かないでいて。何時もの笑顔で………


異世界に着ていた仕事着のポケットには見たことの無い小さな紫色の袋が入っていた

テレビで見た事のある其れは御守りというやつだ

そこに書かれていた文字は漢字で、其れが異世界の物、彼女からの贈り物だと解った

見付けたその日から肌身離さず持ち歩いていて
暗殺者が御守りを持つなんて誰かに知れたら失笑ものだ




ぎゅっと握り締めてポケットに仕舞う


(……………何の御守りだろう……)




共に人生を歩めなくても想う分には自由な筈だ


俺の狭い狭い世界には沙夜子しか入る隙は無いけれど


彼女の世界は広く美しい


他の誰かと幸せに………


なんて考えて



そんなのはやっぱり耐えられない


ズキズキと痛む心臓に遠く水面を見詰める





……………俺の事忘れないで





全く独りよがりで馬鹿らしい。





/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp