ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第32章 優しい人
彼女がヒソカと口にする度に黒い感情が渦巻いて彼女の言葉を見失い自身が吐いた言葉すら覚えていない
只彼女が最後に落とした言葉が胸に深く刺さって痛い
自身は選択を誤ったのだ
自身の思い通りにならない彼女をその度に操作していれば彼女はいつか人形になってしまう
自身には無い魅力に惹かれた筈なのに手の中にいるのだと思えば彼女にも自身と同じ感情を強要してしまった
……………もう彼女は自身に笑いかけたりしないかもしれない
……………もう何時ものように無防備な寝顔を見せないかもしれない
……………血にまみれた醜い自身を好きだとは言ってくれなくなるかもしれない
絶望が溢れて世界が崩れて行く
キッチンに今持っている針の全てを置いて真っ直ぐにベッドルームへ向かった
「………沙夜子」
ノックをして呼び掛けるが聞こえたのは嗚咽混じりの泣き声
…………自身に恐怖して泣いている………
ズキリズキリと胸が痛い
「お願い……中に入れて」
切実な願い
扉を壊して無理矢理に入ればきっと彼女は恐怖する
「……沙夜子……ごめん……話しを聞かせてよ………」
会話を交わす事すらも拒否されてしまえば彼女はきっと傍には居なくなる
胸が痛くて苦しい
思考が絶望に染まる