第170章 暗闇の中

ここを歩いた一年前は恐怖や不安を抱きながらも希望を抱いていた筈なのに


彼に愛される事を知った私がまた恐怖を抱いて帰るだなんて思ってもみなかった


彼に会えるだけで良いと望んでいた筈なのに

いつの間にか彼との確かなものが欲しいだなんて思ってしまって




不確かな未来を恐れて悲しむ私は以前と気持ちがまるで違い、彼のお嫁さんになったのだな……と妙な所で納得して自傷染みた笑みが涙と共に溢れた


それらしい事は特に何もしていないし

全然慣れなかったけれど私自身でも知らない内に一丁前に奥さん気分だったのだと気付いた



彼を愛しい分だけ悲しくて


彼を想う分だけ胸が痛い




重たい足を懸命に進めてみても一向に涙は止まず俯いたまま





ぐちゃぐちゃに歪んだ視界に人影が見えた時には私はポカンと呆けてしまっていた