ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第165章 涙と汗が交ざる時
控え目に突き出した舌でその形を確める様にペロペロと舐め上げれば小さな吐息と共にやんわり開かれた唇
極度の緊張と羞恥から今すぐ逃げ出したくなったけれど彼の中に舌を侵入させ絡ませる
彼のガウンの襟元をぎゅっと握ったままだった手には汗ばかりが滲んで
荒い呼吸に僅かに離れた合間に私を射抜く黒い瞳にドキリとした
彼は只されるがままに意思のある動きは見せなくて不安や切なさばかりが募る
もう一度唇を重ねて舌を絡めてみるけれどお世辞にも上手だとは言えなくて出来る限りの想いを乗せて深いキスを繰り返す
互いの唇から吐息が漏れる頃酸欠にぼんやりとした頭には焦りが浮かびガウンの隙間からおずおずと彼の肌に触れる
彼がいつも私に伝えてくれる様にその指先に愛を乗せて素肌を撫でた
彼が今何を思っているのか解らない
銀の糸を引く唇を舐め上げて熱を帯びた顔をその首筋に埋めればふわりと香る男性的な彼の香り
指先にも伝わる凹凸のある引き締まった身体に呼吸は浅くなり息苦しい
ちゅっと音を立てて首筋から胸元へ……
気が付けば見下ろした彼は彫刻の様な腹筋を覗かせる迄にはだけていた
はぁはぁと荒い息遣いは私だけ
彼は何を考えているのか読めない目で此方を見ているだけで
拒否の言葉も受け入れる言葉も無くズキズキと痛む胸に泣きそうになった
彼を真似てみた所で私は下手くそだ
だけど、彼と唇を交わして肌に触れられるだけで気持ちいいと感じる其処には確かな愛が存在していた
一方的では無く互いに想い合っている筈なのに
私は堪らず声を絞り出した
「……イルミさん」
彼の今を知りたくて彼の気持ちを確かめたくて紡いだ声に彼は酷く妖艶にそしてハッとする程優しく笑みを浮かべた
「やっと呼んでくれた。」
途端に奪われた唇に先程迄成りを潜めていた熱が注がれる
大きな手が髪をくしゃくしゃにして頭を抑えて身動きもままならぬまま只必死について行く
激しいキスの合間に「俺沙夜子に名前呼ばれるの好きみたいでさ。」なんて囁かれた途端に反転した世界
気が付けば彼は伏し目がちに私を真っ直ぐ見詰めていた