ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第161章 サイコなトラウマ
きっと彼の中で私は巨大魚や巨大カニの手掴みに大喜びするクレイジーな女なのだろう
……………しかし現実の私は怯えているのだ
私は静かに彼を見詰めてはっきりと言を紡いだ
「いや、イルミさんにお願いします」
「そう?別に「是非お願いしたいです」
束の間の沈黙の中見詰め合った私達
「そう。」と小さく言った彼は気が付く頃にはビチビチと活きの良い魚をその手に持っていた
がっつりエラに食い込む指からそっと視線を外して私は疎らな拍手を贈った
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19:50
ランタンの灯りに照らされてBBQは続く
私は専ら傍観者で彼が手慣れた様子で血抜きをするのを見ていた
チラリと過る牛さんの姿
彼の左手がビキビキと鈍い音を鳴らして変形し、ビュンっと空を切る音が耳に届いたその時だった
ドォン!!
地を這う様な大きな音と共に夜空に派手に咲いた打ち上げ花火
そして振り下ろされた彼の手に弾かれる様に天高く空を舞う魚の頭
見事な迄にリンクして重なった異質な2つを見上げて再びゾッと鳥肌が立った
「…………た~まや~」
ボトリと鈍い音を立ててコンクリートに落ちた頭はカラフルに夜を彩る花火に照らされてじっと此方を見ている
………………………。
グチャグチャと生々しい解体の音はロマンチックな夜を恐怖に染めて
「はい、出来たよ。」
「……あ、ありがとうございます」
「別に。」
ヒュンッと腕を振って血を払った彼が夜の色をした瞳を此方に向けた時には昼間目撃した猟奇的な場面を払拭する事が出来なくなっていた
「あの、イルミさん………」
私がこの時口を開けたのは少なからず美しい花火が場を和ませてくれているからで
「なんで牛の頭……棒に刺してたんですか……?」
私の消え入りそうな声に彼は平然とお刺身を頬張りながら答えた