ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第147章 嵐吹き荒れる前の
05月14日
私達はホテルの目玉である素晴らしい庭でティータイムを楽しんでいた
3日間の留守の後彼は久しぶりに丸々1日の休暇が取れたらしく
折角素晴らしいホテルに宿泊しておいてろくにお庭を散策していないしゆっくりと庭を眺めたい、と我が儘を言った私に彼は静かに付き合ってくれているのだ
(あー………………幸せ………………)
なんて何を考えずとも浮かぶ言葉
アリスがパーティーを開きそうだと何度も想像した庭はやはり素敵で
太陽の下でピンクやブルー、黄色い花が可愛らしく風に揺れ
何処までも続く広大な庭は隅々まで手入れが行き届きまん丸に揃えられた木々すらも可愛らしい
燦々と注ぐ太陽は目にも眩しくそんな庭をより一層美しく照らしている
生暖かな風に乗って香る上質な紅茶とコーヒーの湯気
傍に流れる小川からは絶えず涼やかな音が響いて
小鳥のさえずりが聞こえたと同時私は幸福の溜息を漏らしていた
太陽の元では暑すぎて選んだ木陰のテーブル
運ばれてやって来たイチゴたっぷりのふわふわショートケーキは甘く舌に溶ける
「美味しい~……イルミさん!めっちゃ美味しいですよ!!」
「良かったね。」
時折コーヒーカップを傾けながら庭を眺める彼は然程興味なさそうに呟いた
悠長に伏せられる長い睫毛、そこから覗く黒々とした瞳
長い髪が風に流れてたゆたう様は息を飲む程美しく私の目を奪う
爽やかな光景に似合わない不適な雰囲気を放ちながらも何処か透明とも取れる不思議な彼の色はこの庭に異質な様でいて違和感無く溶け込み
上品さを所作の端々から感じさせるしなやかな指がショコラケーキを乗せたフォークを持ち上げる姿に私は完璧に見惚れていた
不意に此方を見詰める彼にドキドキと高鳴る胸
そのまま開かれた唇に消えて行くケーキを見届ければ頬が薄く染まる
伏し目がちな眼差しと普段の無機質が抜けた色っぽい唇は最早凶器だ…………
「甘い。」
ケーキなのだから当然の短い感想を単調に落とした彼に只見惚れていると
庭に向けられていた彼の瞳が大きく見開かれて
まるで驚いた様なその表情に私までつられてドキッとした。少々遅れて視線の先を辿るとそこには一人の女性が立っていた