ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第23章 彼の世界の彼
路上駐車していた事で違反取り締まりの警察が来ていたが彼は涼し気に車に乗り込むと無視して車を発進させた
私の世界にいた頃の彼は巧く平和な世間に溶け込んでいたが本来の彼はやはりと言うべきかめちゃくちゃアウトローだ………
追ってくる警察を交わす為に先程迄繰り広げられていたカーチェイスに私は必死に成って親方のケージを抱き締めて車にしがみついていた
そして今やっとの事で穏やかに進み出した車内で私は盛大に吐き気を催している
「…………気持ち悪いです………袋とか無いですか………」
彼と同じ空間で嘔吐するなんて地獄だが車内に撒き散らすより余程良い
手頃な袋でもあればと声を掛ければ彼は私の隣に転がっていた黒い革製のバッグを指差した
「それに吐けば良いよ。」
「…………えっ!!!!!」
私は衝撃の余りバッグを二度見した後にガン見する
どう見たって質の良さそうな黒い光沢が美しい革製のバッグは高級そのものでそっと開いて見ると中には札束がぎっしり入っていた
「…………いやいやいやいや………えっ!!!!!」
高級バッグin札束の中へ吐けだなんて………ここまで彼の感覚がクレイジーだったとは驚愕である
込み上げる嘔吐感を必死に成って耐える私をミラー越しに見遣った彼は
「………別にその辺で吐いても良いけど。」
と言葉を寄越した
………その辺………
スモークの掛かった窓から外を眺めると山間を走っている様で広い路肩が見える
高級バッグに吐くなんて恐ろしい行為より大自然の中の方が良い
寧ろお願いしたい………!!!
「はい!あそこに停めてください!」
しかし車は停車する事無く目の前で路肩が通り過ぎて行き心中は絶望感に溢れる中
「俺の運転のせいで悪いけど、今は急いでる。車内の何処でも良いよ。」
彼の言葉に私は遂に耐えられず昨日迄着ていた黄色いTシャツに吐いた
そして窓から捨てた
「………………。」
「車は乗り捨てるから別に良かったのに………。もう直に空港だから。」
燃え尽きて真っ白な私にそう告げた彼に
………………乗り捨てる…………?…………空港…………?
という疑問を抱いたが私は只窓の外を眺めていた