第4章 じゃあ、また あとで

「好きだから、抱いた。会いたかったからここで待ってた。わかんない？」


幸せな水曜日のままでいたくて、見送りにいかないと、強がった。
それは私の我儘。
素直になれない、認めたくない
私の、我儘。

リョーマの方が、よっぽど素直だった。
けれど
言いたいことだけを言おうと思った時に言うの、リョーマは。
素直すぎるリョーマ。

「私も、リョーマが大好き」

そういって掴んでいた頬から指を離しリョーマの唇にそのまま優しくキスを落とす。
リョーマは素直にそれを受け入れ、の髪に触れた。

本当はこのまま
時間が止まって欲しかった。
でも
私がこの唇を離さなければ、リョーマは行けない。
リョーマは優しいから
優しくて不器用だから
自分から行くとは言えない。
だから私は、唇を離さなければならない。

はリョーマの身体を起こして言った。

「ほら、もう行かないと！時間は待ってくれない」

土手を上がりきったところで、リョーマを待っている人がいることもちゃんとわかっていた。


リョーマは立ち上がり、の方を向く。
そのまま指で姿を円を描くように囲って。

「のそれ、覚えておくから。帰ってきたらまたヤるよ」

自信たっぷりにニヤリと笑っている。

「バカ！私モテるんだから！リョーマなんかよりかっこいい人に奪われちゃうから！」

「へえ、それってまた強がり？が俺のこと忘れられるわけないでしょ」

段々と離れていく、二人の距離。次第に声を大きくして。



「……じゃ、また後で」

「うん！また…………また、後で！！」











リョーマは、車に乗った。

最後まで生意気で。自信たっぷりに。の全てを持って。

ううん、最後じゃない。また後で。
また後で、リョーマに会える。

は、転がったテニスボールを手にしてその場から走り出した。

また後で、帰ってくる生意気王子を笑顔で迎えるために。



笑顔でいるために。