第15章 どうしてそんな顔するの
何も言わずに控え室までの道を歩くヴィクトル
「ね、ねぇちょっとまってヴィクトル。勝生勇利はどうするの?ヴィクトルがコーチでしょ。このタイミングで離れるなんて」
ダメでしょ?と続けようとすると掴まれた腕に力が入り言葉が遮られる
「ねぇヴィクトル 痛い。離してよ みんな見てる」
リンクにスタッフが集まっているのか数少ないスタッフが何事かとこちらを見る
しかしヴィクトルは力を緩めず私とは違うコンパスでグイグイと歩いていく
「待ってヴィクトル早い!」
なんて難癖をつけているうちに控え室に放り込まれる
きゃっなんて可愛い声も出ずに解けかけていた靴紐に足を取られ投げられた反動で床に転がり込む
「ヴィクトル...?」
痛みを我慢しながら恐る恐る名前を呼ぶとふーっと息を吐く音が聞こえる
「ねぇエレーナ 俺をからかってそんなに楽しい?」
と笑顔で聞かれる
「えっ...からかうって何言ってるのヴィクトル?」
と笑顔の奥に隠された不機嫌さを感じながらも聞き返す
するとしゃがみ目線を合わせるヴィクトルが
「俺のこと好きならどうしてほかの男に色目使うの?」
と起き上がりかけていた私の肩を掴み頭を守りながら寝かせる