第1章 媚薬
「はぁ…はぁ…っ!」
血は出たが、かすり傷だ。
問題はそこではない。
右脇腹を掠った瞬間、その事に気を取られ、何かを一気に飲まされてしまった。
(毒か…)
冷静に判断するために確認していく。
心拍は高め…
体温は…37度越えた微熱か…
呼吸は荒く息苦しい…
関節は風邪を引いたように痛みと痺れがある…
手はまだ動く…肩は…大丈夫…
脚と、腰も…膝も…ガクガクして
もう既に力が入らない。
(最悪…本当に最悪…)
まだ身体が動くうちに
ゆっくりその場を離れ、木の影に座った。
(あー、気持ち悪い…、媚薬とか)
身体が先ほどよりも
さらに息が荒くなり、
顔が火照り始めた。
手をグーパーして、まだ手は動く事を確認して、ポケットに入っているポーチの中の解毒剤を取った。
(この感じだと、薬を飲んで30分ぐらいで抜けるはず…)