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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第4章 襲われた少年-キオクノハコ-



二日目の朝。



私は制服に着替え、首にストールを巻いて、少し早い時間に身支度を終えてしまった。



「(軽い散歩も兼ねて裏庭に行こう。)」



部屋を出て裏庭へと向かう。



「……あ。」



ふと聞こえた雀の鳴き声に頭上を見遣ると、大きな木の枝に古い巣箱が掛けてあった。声はその中から聞こえてくる。



「その巣箱、結構人気なんですよ」



背後からの声に振り返ると、星川さんが穏やかな笑顔を浮かべて立っていた。



「おはようございます」



「おはようございます、早いですね」



「目が冴えちゃって」



「なるほど」



ふと気付くと、他の木にも幾つか巣箱がある。私の視線に気付いたのか、星川さんも巣箱を眺めながら言った。



「賑やかですよね、僕が来た時にはもうあって…雀とか四十雀とか、結構使ってくれてるみたいですよ」



「居心地が良いんですね」



「ただ少し古くなってるから、そろそろ庭師さんに頼んで補強してもらった方がいいかも知れません」



「(彼なら巣箱も完璧に直せるんだろうな。)」



生まれながらに全ての才能に恵まれた"彼"は『天才』や『完璧』という言葉が似合う人だった。



容姿端麗で頭脳明晰、おまけにスポーツも万能。そして誰にでも優しくて男女問わずモテて、家柄は由緒ある名家の子息だ。



「庭師さんには僕が頼んでおきますよ。せっかくあそこに慣れたのに、壊れちゃったら可哀想ですもんね」



「そうですね」



「…カワセミは、ここには来ないだろうなぁ」



「カワセミ…確か星川さんと同じ名前ですね」



「え?」



「"翡翠"と書いてカワセミ。本で見たことがあるんです。鮮やかな水色の体が特徴で『青い宝石』って呼ばれてます。すごく綺麗ですよね」



「……………」



「星川さん?」



驚いた顔を浮かべた星川さんだったが、すぐに柔らかな笑みを零した。



「物知りなんですね」



「星川さんはカワセミが好きなんですか?」



「…好きというか、見てみたいなって」



「見られますよ」



「!」



「いつか必ず。星川さんの元にカワセミは来ます」



「有難うございます。じゃあそろそろ行きましょうか」



「はい」



星川さんは嬉しそうに微笑んだ。



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