第3章 初めての巡回-ジユウ-
「何も出来ない自分が悔しくて、もっと強くなりたいって思ったから剣道習い始めたんだろ?」
「はい」
「血の滲むような努力をたくさん重ねて、大会で優勝するまでの実力を手に入れた。それってさ、お前が諦めずに一生懸命努力した証なんだと思うよ」
「!」
「けど男を気絶させられるって言った時は流石に驚いたけどな」
「……うっ」
軽く笑う尾崎さんの言葉に私は押し黙るしかなかった。
「兎に角!今はフクロウの一員として頑張りたいです!まだまだ勉強中の身ですので!」
"あの時"のことを思うと
恐怖で身が竦んで動けなくなる
何も出来ない無力で弱い私
だから自分を守る術を身につけた
もう二度と…あんな思いはさせないように
「…なるほど」
「僕は応援しますよ」
「有難うございます」
「私も応援するわ」
「…皆さんのお役に立てるように努力致しますので、ご迷惑を掛ける時もあるかと思いますが、早く仕事を覚えられるように頑張ります」
「頑張るのはいいけど、無茶して倒れでもしたらそれこそ迷惑だからな。あまり気を張りつめないように」
「…もちろんです」
「隼人、そんな言い方やめてください。
彼女が傷付いたらどうするんですか」
「あー…ごめん。悪かった」
「全くもう」
「本当にごめん」
尾崎さんが頭を下げて謝る。
「あの、気にしてないので大丈夫です。私も言い方がキツくなる時もあると思うので、その時はすみません」
私も頭を下げて謝る。
尾崎さんと星川さんが驚いたように私を見ていたが、すぐに二人は笑った。
「優しいんですね、立花さん」
星川さんが柔らかく笑う。
「でも今のは完全に隼人が悪いです」
「だから悪かった、ごめん」
「本当に大丈夫ですよ、尾崎さん」
「立花は優しい!」
「隼人は口が悪いですけどね」
「翡翠…今日のお前は俺に厳し過ぎないか?」
「気のせいじゃないですか」
そんな二人のやり取りに思わず笑ってしまう。
「(まるで…)」
"彼"と"彼女"みたい
「(だから懐かしく感じるんだ…)」
「さて、そろそろ次の店に行くか」
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