第39章 生まれた意味-クロエ-
「思ってるよ。だって隼人は…私の過去を話しても嫌わないでいてくれた。こんな跡があってもそれごと全部愛すって言ってくれた。それが凄く嬉しかったの」
嬉しそうに笑う私を見て長谷君は溜息を吐く。
「…僕が甘かった。この世界に馴染む前にお前を無理矢理にでも連れて帰るんだったな」
「長谷君が納得できないなら…引き金を引いて私を撃てばいい」
「随分と威勢がいいな」
「私は君を救う為にここにいるんだよ」
「何だと…?」
「長谷君の心は妹さんの死がキッカケで壊れてしまった。深い傷を抱えて今まで生きてきたんだよね?でも…そんなの悲し過ぎるよ」
「だから…お前が僕を救うと?」
「そうだよ」
「巫山戯るな」
「!!」
長谷君の顔が急に怖くなった。
「昔からお前の優しさは不愉快だった。優しさで人を救おうとするな。お前にとっては優しいつもりでも相手にとっては不快な事だってある」
「長谷君は…私の優しさを不愉快だって思ってたんだね」
眉間を寄せたまま、長谷君は黙り込む。
「…いいか詩遠。誰も傷付かない世界は存在しないし、お前の優しさだけじゃ人は救えないんだ」
「…それでも救う」
「いい加減にしろ」
怒気を含んだ声で長谷君は私を憎たらしそうに睨みつける。
「僕は変わらない。お前がどんな言葉を掛けようと。どんな思いを届けようと。お前の救いは僕には必要ない」
苛立つように吐き捨てた長谷君が
立ち上がって私から離れていく。
「どこ行くの…?」
彼は銃口を天井に向けた。
その先には大きなシャンデリアがあり、真下には私とクロエがいる。
「言っただろう、総てを終わらす」
「そんなことしたら本当に死…」
「構わない。それでお前に会えるなら。」
「(まただ…また長谷君は私を…)」
「これからはずっと一緒だ」
「長谷君やめて!!」
「……………」
「絶対に助けるから!!救うから!!
お願い…私を信じて────!!」
両手で隼人がくれた御守りを包み込むように胸の前で握りしめて叫ぶ。
バンッ!!
その時、大きな音がした。
「そこまでだ」
勢い良く扉が開いた音だった。
next…