第3章 初めての巡回-ジユウ-
「(別におじい様との関係を隠してるわけじゃないけど…変に態度を変えられても困るし、黙っておこう。)」
そして一軒のお店に入った。
「おーっす!杙梛さん!いい出物ある?」
「よう。残念ながら稀モノはないぜ」
「(こっちの方もなかなか…)」
もう何から驚けばいいのか、迷うくらいだった。
店の中に溢れ返っている奇妙なもの達。男性の奇抜な衣装。しかも肩先には、不思議な動物がちょこんと乗っている。
「(…犬?狸?それとも珍獣…?)」
「おや、また新入りか」
「初めまして。立花詩遠と申します。これからよろしくお願い致します」
「男はいる?」
「は?」
「まぁいても別にいいけど、俺を愛人にどう?後腐れない一夜の関係でもいいよ?恋人だろうが愛人だろうが、ヤることはどうせ一緒だ」
「……………」
「待った立花。目が怖いから。お前杙梛さんを目だけで殺す気か?あと不穏な空気が滲み出ててやばい。落ち着け。」
スッと凍えるような冷たい眼差しを向け、苛立ちと無言の圧をぶつければ、焦った様子で尾崎さんが止めに入る。
「私は落ち着いてますよ。ただこちらの方の発言がどうしても許せないだけで。女性を愛人にするなんて本気ですか?」
「男はそういう生き物なんだよ」
「へえぇぇ…」
「杙梛さん、それだと立花が誤解する。別に世の中の男が全員そうとは限らないだろ。少なくとも俺は愛人なんて必要ない。恋人ができたら生涯その人だけを一途に愛する!」
「僕だってそうですよ。恋人がいるのに愛人を作るのはおかしいじゃないですか」
鴻上さんは何も言わなかったが、興味なさそうに店内を見ていた。ツグミちゃんも杙梛さんの言葉には顔をしかめている。
「お二人の言う通りです。世の中全ての男性が貴方のような考えではないんですよ」
「そりゃあそこの二人がまだ本気の恋ってのを知らねぇだけだ」
「…恋人も愛人もお断りします。そんな関係は続けても虚しいだけですし。」
「じゃあ結婚すればいい」
「申し訳ありませんが、誰とも結婚するつもりはありません」
「え」
「え?」
そこで何故か尾崎さんが驚いた声を上げた。
.