第38章 イニシャル-ｳｿﾂｷ-

「はっきり言うよ」



「(何を…言い出すの…彼女の前で…)」



「俺は隠さんが総ての犯人だと……───思ってるよ」



「隼人！彼女の前で何を言い出すの!?」



「！詩遠ちゃん…？」



「最初はさ、我ながらつまらない嫉妬だった。でもお前が見つけたあの本を燃やしたあたりから…何だか俺の中で嫌な感じがするようになった」



「………………」



「…お前、自分で言ってたのに」



「……え？」



「先輩の事件があった日、俺達に聞いたじゃないか。『稀モノって書いた本人は気付かないものなんですか』って」



「…隼人？」



「そうだよ。普通の人間は…気付かないよ。誰かに読ませて反応を知るか…もしくはアウラが視えでもしない限り」



「あ、アウラが視えるからといって決めつけるのも違うと思うよ!?」



「被害者の一人目は…恭彦さん。研究室である意味一番隠さんの近くにいた人だ」



私は咄嗟に朱鷺宮さんを見てしまった。
けれど彼女は何も言わなかった。



「それで猿子さんが、隠さんの報告書の文字を全部確かめた」



「………………」



「…台所の油の話、続きがあるぞ。翡翠があそこで…マッチ拾ったって」



「！？」



「朱鷺宮さんに聞いたら違うって。俺も、滉も、紫鶴さんも、雉子谷さんも煙草は吸わない。鵜飼と翡翠も違う。管理人さんのものでもないって。隠さんのだったよ」



「…別に、おかしくないでしょ。だって書庫には石油ランプがあるってツグミちゃんから聞いたことがあるもの」



「目を背けてる場合か！お前、そこで本当に死んでたかも知れなかったんだぞ！」



「もう…止めて…」



「今度は…お前が死ぬかも知れなかったんだぞ!!」



「…隼人。落ち着け」



「…済みません」



「…申し訳…ありません」



確かめたいことがある



隠さんに



「…隠さんと話をさせて下さい。ツグミちゃんが駄目なら私でも…」



「何度同じこと言わせる気だよ」



「もちろん、どんな本を差し出されても絶対に読まない。心配なら…書庫の外にいて。それならいいでしょう？」



「…私も反対だ」



「朱鷺宮さん…」



「立花の考えなんて手に取るように分かる。説得するつもりだろう」



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