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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第38章 イニシャル-ウソツキ-



「百舌山教授の自宅から、葦切さん宛ての小包の封筒が出て来た。消印はまさにあの日のものだが…偽造だ」



「偽造って…!」



「丸めた跡があるから、もしかしたら現場付近にでも落ちていたのを拾ったのかも知れない」



「………………」



「そこが一体どう繋がるのか、百舌山が死んでしまった以上、彼にはもう確かめられないことなんだが。そしてその封筒の文字と…」



「久世ヒタキ君が読んだ『野崎洋二』、そして葦切君に届けられた『根本靖』……巧妙に変えてはいるが、筆跡は隠君に…似ている気がするな」



「…違います!」



ツグミちゃんは咄嗟に叫んだ。



「そんなこと…あるはずな…」



「そのイニシャルでふと思いついた。ヒタキ君の事件の『野崎洋二』、久世が先日見つけた『名雲義之』、葦切さんの事件の『根本靖』。そして『隠由鷹』……───どれもイニシャルはY.Nだな」



「………!?」



「まぁこれは単なる偶然かも知れないが」



朱鷺宮さんの瞳は、そう言っていなかった。そして隼人の瞳も。猿子さんはお面で見えない。



けれど恐らく、憐れむようにツグミちゃんを見ている気がした。



「しかも彼は炎に異常な反応を示すようだね?……もう、何度も聞かされていると思うが、稀モノというのは本に強い感情が焼きついたものだ」



「(本に強い感情……)」



「彼が炎に対して異常な執着があるのなら、焼身自殺という影響を与えることも充分に考え得る」



「…そ、んな…」



「原因までは…流石に僕達には思い当たらない。彼は自分のことを殆ど話さないし。それとも君は何か聞いてる?」



「……いいえ」



「立花君はどうかな」



「え…?」



「隠君から何か聞いてる?」



「いいえ…隠さんとはそれほど親しかったわけではないので」



「僕達は視ることが出来ないけど、どれも炎のような…アウラらしいね?」



ツグミちゃんは力なく頷いた。



「何か…何か事情があるのかも知れません」



「久世!」



「私も…そう思います」



「!?」



「立花!お前まで何言って…!」



「だって百舌山さんは私にも非道いことを言ったんです」



「おい!?お前あいつに何処で会ったんだよ!」



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