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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第37章 濡れそぼる雨-アヤマチ-



「ちなみに…その本は今どちらに?」



「警察が探したらしいんだけど、見つからなかったそうよ。だから今どこにあるかは行方不明ね」



「……………」



「彼は酷く悔やんだそうよ。自分が小説なんて書かなければ妹は死なずに済んだって…葬儀の日、彼女が眠る棺を前にして涙を流しながら何度も謝罪する彼の姿は今も覚えているわ」



「…そんな事件があったんですね」



「私は記者として彼に取材を申し込んだの」



「え!」



「誤解しないでね、私は真実が知りたかったの。どうしても彼が…故意に妹を殺したとは思えなかったから」



「!」



「でも拒絶されてしまったわ。『貴女は信用できない』って追い返されちゃった」



先生は悲しげに笑う。



「その後も何度か彼に取材を申し込んだけど駄目だった」



「……………」



「彼の書いた本が稀モノという危険な本で…それを生み出したのも彼が最初だった。本当に…悲しい事件だったわ」



「(稀モノを一番初めに生み出した人物。当時13歳だった彼は、まさか自分の書いた本で妹を殺してしまうなんて夢にも思わなかっただろう。でも…実際に彼は妹を殺してしまった。)」



「他の記者達が彼を批難するような記事を書いたの。"突然本が燃えるなんて馬鹿馬鹿しい""彼は妹を殺害した罪から逃れるために嘘の狂言をしているだけだ"…ってね」



「非道い…」



「私はそんな記事しか書けない無能な記者も、それを真実と鵜呑みにした世間も許せなかった。記者は真実のみを伝える。例えそれが誰も望まない真実でも…私達には伝える義務がある」



「……………」



「なのに捏造だらけの記事が世間の目に触れてしまった。そのせいで彼は外の世界を恐れ、家に引きこもるようになったの」



「あの…彼は今、どうしているんですか?」



「さぁ…今頃どうしているかしらね。当時の家はもう取り壊されてしまっているから何処かに引っ越したのかもしれないわ」



「そうですか…」



「確か彼は貴女と同じくらいの歳ね」



「同い歳…」



「あ、もうこんな時間だわ。そろそろ行かなきゃ…」



「お話を聞かせて頂き有難うございました」



笑顔で手を振り去って行く鶴科先生を見送り、私も図書館を後にした…。



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