第36章 ご褒美の味-シアワセ-
『何を考えてるの!?』
夢の中で誰かの怒鳴り声がした
『君は絶対にやってはいけないことをした!!』
『お前が望んだんだろう?』
『だからって…!!』
『僕はお前の願いを叶えただけだ』
『確かに願った。"────"って…。
でも!!これじゃああの子が可哀想!!』
『可哀想?何故?』
『そんなことも分からないの!!?』
『別にホンモノじゃない。真似ただけだ。
これは…お前が望んで叶った結果だよ』
『ふざけないで!!』
怒っているのは私だった
ここまで声を荒らげて怒ったのは初めてだ
そして私を怒らせた相手は…
『長谷君は何も分かってない!!
一番辛いのは記憶がない事なんだよ!?』
『それの何が問題なんだ?』
『問題だらけでしょう!?あの子に記憶がないって事は、何も知らずにこの世界を生きるって言ってるのと同じなんだよ!?』
『それは彼女も理解している。自分に記憶がない事は目覚めた後すぐに伝えた。だから何の問題もない』
『っ〜〜!!長谷君の馬鹿!!』
夢の中の私は怒りを抑える事ができず
最高潮の怒りを彼にぶつけていた
それもそうだ
だって彼は…それだけの事をしたのだから
『彼女は笑う事も出来ないんだよ!?中身が空っぽだから感情だって存在しない!!それなのに…!!』
『お前は何に対してそんなに怒っている?彼女に記憶がない事か?それとも勝手にお前の望みを叶えた事か?』
『全部!!』
『彼女の身体に異変はない。少し機械的な喋り方が目立つがちゃんと会話の受け答えも成立している』
『そういう話じゃない!!私達は禁忌を犯したんだよ?罪を犯したの…!!』
『なんだ、せっかくお前の願いを叶えたのに嬉しそうじゃないな』
『当たり前でしょう!?私はただ願っただけで、こんな形にしてほしいなんて言ってない!!』
『だが今更無かった事には出来ない。それこそ彼女が可哀想だろう?』
『……………』
『僕達は罪を犯した。"彼女を願った者"と"それを叶えた者"。これは僕とお前だけの秘密だ。誰にも喋ってはいけないよ』
『言えないよ…あの子の為にも。
だから絶対に隠し通して。』
『もちろんだ』
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