第3章 初めての巡回-ジユウ-
「…似合う、かな」
朝、仕立て屋さんが届けてくれた制服に袖を通してから、私は鏡の前から離れられずにいる。
「…ボタンも全部ちゃんと留めた。リボンも曲がってない…。首元を隠すストールも大丈夫…」
髪は編み込みのハーフアップにし、リボンで結んだ。冷感効果のある薄手のストールは首の横で結び、制服のリボンが見えるように調整する。少しはオシャレに見えたらいいなと思いながら身嗜みを整えた。
「ストッキングは履いた方がいいのかな…」
用意された黒のストッキング。
「私、伝染し易いんだよな…」
黒は足を細く見せてくれる効果がある。でも私はストッキングを履くと伝染し易いらしく、必ず破れてしまうのだ。
「その度に何度"彼"に叱られ…」
言いかけて、言葉を止める。
「…やだな。この世界にまで来て思い出すなんて…」
うんざりするように溜息を零す。
「昨日は本当に焦った。うっかり口を滑らせてフラグを折るところだった。はぁぁ…寿命が一気に縮んだ気がする…」
コンコンッ
その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「詩遠ちゃん、おはよう」
声の主がツグミちゃんだと分かり、ドアを開ける。
「おはよう、ツグミちゃん」
「わぁ!詩遠ちゃん!とても素敵!髪型も可愛いし、制服も似合ってるわ!」
「ありがとう。ツグミちゃんも制服姿似合ってるよ。もしかして迎えに来てくれたの?」
「せっかくだから一緒に行きましょう」
「ありがとう!」
微笑んだツグミちゃんの視線が私の足に向けられた。
「詩遠ちゃん、素足!?」
「う、うん…」
ツグミちゃんは衝撃を受けたように驚いて固まった。その頬は微かに赤らんでいる。
「ストッキングがあった筈よ?」
「私、伝染し易くて…。履いてもすぐストッキングを駄目にしちゃうの」
「でも男性の目に入るのよ?
詩遠ちゃんは恥ずかしくないの?」
「やっぱり素足はダメか…」
「だ、駄目ってわけではないのよ…」
「ツグミちゃんって、実はスカートの丈、短いって思ってたりする?」
「うっ…こんなに短いスカート履いたことないんだもの。礼法の先生に見つかったらお説教よ」
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