第34章 彼女の提案-ヨワムシ-
「猿子さん達も言ってたろ、一気に広めるのは難しいって。でもそんな内容なら、面白がってきっと広まるのも早い。そうして話題にしてもらって、一人でも多くの人に知って欲しい」
「…そうだね」
「今はとにかく、危険な本を読ませないことが重要だからさ。……それも正直、悲しいし申し訳ないけど。……でも俺、今、猛烈に感動してるし、感謝もしてる」
彼が笑んだ。
その笑顔に、また勇気づけられる。
「…みんな頑張ってる。だから私も頑張る。」
「その意気その意気!応援してるぜ。俺達も書店の指導と警備張り切ってやってくるよ!」
「あ、それと…もう一つ言わなきゃいけないことがあって…」
「どうした?」
「私、アウラが視えるようになったの」
「え!?」
「昔、ちょっと不幸な出来事が起きてね、それが原因で無意識にアウラを視ることを拒絶してしまったんだ」
「不幸な出来事?」
「学生の頃、とても親しかった友人を亡くしたの」
「………え」
「窓からの転落死。私が第一発見者。その光景があまりにもショック過ぎてアウラが視えなくなっちゃったんだ。まぁ…アウラが視える事すら忘れてたんだけどね」
隼人の顔が辛そうに歪められている。
「倒れた彼女の体が血で染まってて…目の前が真っ暗になった。霊安室で彼女に触れた時、温かかった体温が凄く冷たくて…ビックリした」
「もしかして…お前があの時、倒れてる鷺澤を見て取り乱したのは…」
「友達の死と重ねて見えちゃったから。でも稀モノの判別が付く今だからこそ、みんなの役に立って、頑張りたいの」
「…そっか。うん、一緒に頑張って稀モノを見つけような」
隼人は深く聞かないでくれる。裏庭で剣道の練習に付き合ってくれた時も、彼は私を気遣って、何も聞かないでいてくれた。
「(ごめんね…本当は知りたいはずなのに…)」
貴方に総てを伝える勇気がなくて
私の『秘密』も『罪』も打ち明けられなくて
本当にごめんなさい……────
「(だからせめて…貴方の為に頑張らせて。この事件が解決するまでの間だけ…弱虫な私に、ほんの少しの強さを───。)」
next…