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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第32章 失われた証拠-ヤキモチ-



「まさかモッツァレラチーズまで置いてあるとは…。しかもオリーブオイルとブラックペッパーまで売ってるとは思わなかった」



冷蔵庫から材料を取り出す。新鮮なトマトとモッツァレラチーズは予めスライスしておいたおかげで余計な手間が省け、時間が短縮出来る。



「トマトとモッツァレラチーズとバジルをお皿に並べて…オリーブオイルとブラックペッパーをかけて…完成!」



数分で出来上がってしまった。



「まぁお手軽で良いんだけどね」



「お、美味しそうなの作ってるな」



「朱鷺宮さん!」



「何を作ってたんだ?」



「カプレーゼです」



「カプレーゼ…酒の肴に合いそうだな」



「お一人で飲まれるんですか?」



「今夜は紫鶴も遊びに出かけてるし、独りの晩酌も良いもんだよ」



「あの…私、一緒に飲んでもいいですか?
あ、お酒は呑みません!紅茶です!」



「はは、大歓迎だよ」



「カプレーゼも食べて下さいね」



「有り難く頂くよ」



✤ ✤ ✤


「見栄えも綺麗だし旨そうだ」



「お口に合えば良いのですが…」



朱鷺宮さんはカプレーゼを一切れ口に運んだ後、微笑ましそうに笑う。



「うん、凄く美味しい」



「良かったです」



「立花は本当に料理上手だなぁ」



「(隠さんと同じこと言ってる…)」



「ところで隼人に告白されたんだって?」



「!?」



その瞬間、私は紅茶を吹き出しそうになるのをどうにか堪えた。



「『焦り過ぎたかも知れない』って言ってたから」



「い、いえ、あのですね…」



「実は、隼人から『灰被り姫』について大体の話は聞いていたんだ。立花がここに来る前日だったかな」



「そ、それはですね…」



「特に取り持つようなことはしないから自力で落とせと言っておいた」



「お、落と…」



「…別にね、こんな話をしてるのは、隼人とどうにかなれって言ってるわけじゃない。ただ……───いや、止めよう。お節介だ」



『君は『比翼の鳥』という言葉を聞いたことがあるかな』



その朱鷺宮さんの少し苦い笑みに、私はふとあの言葉を思い出した。



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