第32章 失われた証拠-ヤキモチ-
「(…あれ?隠さんの眼…)」
こんなに冷たかったっけ…?
「(まるで…彼のような───)」
「……───君は優しいね」
その声はどこか冷たさを含んでいた…。
✤ ✤ ✤
「本…残念でしたね」
みんなと作戦室を後にし、巡回に向かう途中で翡翠がぽつりと洩らした。
「また探すから大丈夫。それに隠さんが危険な目に遭わずに済んで良かったよ」
「…そんなに凄いものだったんですねぇ。隠さんでさえ危なかったなんて」
「本当にね」
「彼はどんな稀モノても平気みたいだ、って猿子さんが感心していたのに。一体…どんな情念が宿っていたんでしょうね」
「改めて稀モノの恐ろしさを実感したよ。でも前向きに考えることにする。ネガティヴは良くないもんね」
「流石です。では僕は今日はこっちなんで」
「俺も。じゃあな」
「私もこっちだから行くわね」
翡翠に続き、滉とツグミちゃんも去って行く。
「…残念だったな」
「もう言っても仕方のないことだから」
「それはそうだけどさ。でも……────幾ら何でも燃やさなくても」
「咄嗟だったんでしょう?
隼人だって聞いてたじゃない」
「…そうだよな、ごめん。
じゃあな、今日も頑張ってこいよ」
「うん、行って来ます!」
✤ ✤ ✤
「(また探すのにも苦労が…)」
歩きながらつい小さな溜め息が洩れる。
あの日以来、全く稀モノとは出会えていない。もちろん、焦っても意味がないもの分かってる。
「(でも…私は何も知らないから…)」
だから人一倍、頑張らないといけない
「そこの君」
「え?」
何気なく振り返った途端
思わず後ずさってしまう。
「……………」
「(この人…確か、この間、笹乞さんのお店にいた…)」
「帝国図書情報資産管理局の立花君だね?」
「え!?」
何故?
何故、私の名前を…
間近で見れば見る程、不気味な風体だった。痩せこけた手に、落ち窪んで陰湿な光を宿した瞳。
「あの…失礼ですが…」
「ああ、自己紹介がまだだったね。私は帝都大学の百舌山というものだ」
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