第29章 導火線-コウイ-
「おはよう!今日も元気に稀モノ探しに行くか」
「そうだね、今日もまた見つけられ…」
「あ、立花さーん!ちょっと待って下さい!電話ですよ、電話!」
「…私に?」
アパートの管理人さんが中から大きく私を手招く。
「ご実家からですよ!」
「え!?」
まさか立花家に何か?
私は恐る恐るホールの壁の電話の受話器を取る。
「…もしもし?」
《今日も元気にしておるか孫娘よ!》
「…………っ」
電話の相手がおじい様だとは思わず、普通に受話器を耳に当てていた。相変わらず声を抑えると云う事を忘れるおじい様のパワフルで豪快な声量に私の耳がキーンとなった。
「おじい様、声が大きいです。おかげで耳の奥がキーンとなりました」
《わっはっは!それは悪い事をした!》
悪い事をしたと自覚はあるのに直すつもりはないらしい。そんなおじい様に呆れながらも私は受話器を耳から少し話して喋ることにした。
「それで?一体どうしたのですか?」
《仕事に行く前に可愛い孫娘の声が聞きたくなってな!》
「ご実家から掛けて来るので何かあったのかと心配したじゃないですか」
《安心しろ。儂も使用人達も今日も皆、ピンピンしておる!なんなら邪魔だからと早くに家を追い出されそうになった!》
「(相変わらず雇い主に対しては手厳しい使用人達だな。まぁおじい様も気にしてなさそうだから別に良いけど。)」
《それと近々スクールの帰りに葉織がウチに寄るらしい。お前の事は仕事で忙しいからと言っておるが、一応伝えておくぞ。》
「葉織が…。休みが合えば帰りますが、最近は忙しいので少し難しいかも知れませんね」
頭の中で次の休みを思い出すが、当分先だった為、葉織に会えるのは難しかった。
《無理に合わせようとせずとも良い。あの子もお前の忙しさは理解しておる。もし気になるなら手紙の一つでも送ってやったらどうだ?》
「そうですね。フクロウに来てからずっとあの子に連絡もしてなかったので、近いうちに手紙を書いて送ろうと思います」
《それが良いな。ところで体調は崩していないか?ご飯も好き嫌いせず三食しっかり食べておるか?》
「体調は万全ですよ。ご飯も好き嫌いせずにしっかり三食残さず食べています」
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