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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第27章 彼とコロッケ-リソウ-



「(なんだか疲れた…)」



あれから口を噤もうと努力するものの、記者さんとその見習いさんの話術に叶わず、誘導尋問で殆ど聞き出されてしまった。



「(まさか柾さんが女学校時代の私の黒歴史を知っていたなんて…)」



───それでも、不思議と気分はもう晴れやかだった。自分の現金さに笑ってしまう程に。



「さて…稀モノ探し頑張ろう!」



だが、残念なことに、朝の意気込みは虚しく今日は一冊の和綴じ本さえ見つけられずに終わってしまった。



焦りは禁物───そう自分に言い聞かせ、私はバスに乗り込んだ。



「(あれは……)」



帰りのバスを降りて少し歩くと、坂の上の方から隼人が歩いてくるのが見えた。



───コロッケらしきものを食べながら。



『っていうか男はみんな好きだろ!!胸が!!』



「!!」



あれは聞かなかったことにして忘れてしまおう



「お」



声を掛けるかどうか迷っているうちに気付かれ、機嫌良さそうに彼が歩み寄ってくる。



「お帰り!俺もついさっき戻って来たところなんだ。ところでコロッケ食う?」



そう言いながら彼は手にしていた紙袋を自慢げに差し出す。



「揚げたて!あそこの店人気でなかなか買えないからさ、みんなにお裾分けしようと思って」



「美味しそう!」



思わずそう言ってしまった後、はっとなる。



「(でもこんな時間に食べたら太りそう…)」



けれど揚げたてのコロッケはまだ湯気を立てていて、何よりそれを持つ彼の笑顔が私を惹きつけた。



「じゃあ一つ…いい?」



「どうぞどうぞ」



私はハンカチを取り出し、紙袋の中から恐る恐るコロッケを一つ掴み出した。



「…あ、まだこんなに熱い」



「だろ?口の中、火傷すんなよ」



そう言った隼人がまた自分のコロッケを一囓りする。



「(…元の世界でも学校帰りにコンビニで買ったお菓子を歩きながら食べてたっけ。)」



でもこの世界では女性が食べ歩きをしたら駄目らしく、そのことを知らずに普通に食べて歩いて帰っていたら、偶然会った女学校の先生に見つかってすごく怒られたことがあった。



「(でも学校帰りにウエノ公園のベンチでこっそり買ったコロッケを食べてたっけな…)」



私はコロッケを小さく齧った。



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