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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第26章 干からびたパン-ヒトリダチ-



「和綴じ本は入ってますか?」



「初めて逢った日には頬を赤らめてくれたのに。俺達も遂に倦怠期かな」



「頬を赤らめた記憶はないです。そんなことより、和綴じ本は入ってますか?」



「倦怠期を乗り越えるのはやっぱり刺激だよな。どういう趣向が好みだ?」



「和綴じ本は入ってきてますかと聞いてます」



「俺は何でも構わないぜ。それとも片っ端から試してみるか?どれからがいい?舶来の秘薬…」



「し・つ・こ・いです。秘薬になど興味ありません。私が興味あるのは和綴じ本だけです」



冷たくあしらうと、杙梛さんの肩のペリがまるで私をあやすように小さな傘を振った。



「まぁまぁ、この程度で不機嫌になるなって。他にもっと意地悪な店だってあるだろ?」



「今のところこの店が一番意地悪です」



「お嬢さんは相変わらず辛辣だなぁ」



「………………」



「あんたみたいなのが独りでうろうろしてたら絶対に苛める奴がいるだろ?他の奴に苛められて泣かないうちに、俺が最初に泣かしておこうって言う優しさだよ、優しさ」



「和綴じ本に関してだけ答えて下さい」



「ない」



「有難うございました」



頬を膨らませながら私は杙梛さんのお店を出る。彼が後ろでニヤついて見送るのが嫌でも分かった。



✤ ✤ ✤


「……もう!もう!」



私は次の店に向かって足早に歩き始める。



「あれさえなければ…私達のことを歓迎してくれるいい人なのに」



『他にもっと意地悪な店だってあるだろ?』



「………………」



真っ先に浮かんだ店に、これから向かわなければならない。



「…大丈夫、いつも通りに」



私は気が重くなるのを感じ
溜め息を吐いたのだった…。



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