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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第22章 月に行きましょう-アイノカタチ-‪‪❤︎‬



「お帰りなさい」



「……───ただいま」



お互いに笑んで、そっと顔を寄せ、口付けを交わす。



「今日は満月なんだな」



「……………」



窓には雲を翳らす満月が昇っている。



「(…まだ、やるべきことがある。)」



私は優しい表情を見せる滉に告げた。



「──滉。」



「どうした?」



「私、ちゃんとけじめをつけようと思うの」



「けじめ?」



「元の世界に帰って、会わなきゃいけない人がいる」



「は?元の世界に帰るって…」



「あ、誤解しないで。ちゃんと全てが片付いたらちゃんと戻って来るから」



「…その保証は?」



「……………」



「元の世界に帰って、またこっちに戻って来る保証はどこにあるんだ?」



「それは…」



「ないのに、あんたを帰せないよ」



滉の言う事も最もだった。それでも私はやるべきことを優先させた。



「滉、聞いて。確かに戻って来れる保証なんてどこにもないよ。でもね…これからずっと貴方と一緒にいる為には元の世界と区切りをつけないと幸せになれないの」



「!」



「貴方は私を好きだと言ってくれた。愛してると言ってくれた。私がいるからここに残ると言ってくれた。それは私も同じ。」



「同じ…?」



「貴方が好きだから…愛しているから…貴方がいるこの世界に残りたい。でも…このピアスを外さない限り、私はきっとまた…過去に囚われ続ける」



そっと茜色のピアスに触れる。



「(鳥籠を壊さないと。彼に囚われたままの『あの子(私)』を解放してあげないと。今度こそ、自由に空を飛んで、行きたい場所に行けるように───。)」



今でも鳥籠に囚われている『私』は、きっと泣いている。だから鍵を開けてあげよう。



「お願い…全てを片付けるために。この世界で生きるために。滉と一緒に幸せになるために。私は元の世界に帰らないといけないの」



「……………」



「滉が不安なのは分かる。でも私を信じて待っていて欲しい。必ず帰って来るから」



「…駄目って言っても利かないんだろ、どうせ」



「滉……」



「いいよ」



「うん…有難う」



私達は支度を済ませると満月に一番近い場所であるウエノ公園に向かって歩き出した────。



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