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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第19章 決断-ユウキ-



どんなに心が重くても、時間は容赦なく過ぎていく。その日も殆ど眠れぬまま、私は朝を迎えた。



全身が怠く、とても掃除に身が入るような状態ではなかったけれど、手を動かして少しでも無心になりたかった。



「おはようございます、立花さん。
今日もいい天気ですねぇ」



「おはようございます」



管理人さんはポストから新聞を取り出し
歩きながら読み始める。



「……ああっ!?」



「!?どうかしましたか!?」



「あ、いやいや!読み違いだった!
何でもない!」



「…見せてください!」



「あ、立花さんは読まない方が…っ!!」



✤ ✤ ✤


「…これでほぼ決まりだな。
奴の目的はうちを潰すことだ」



「……………」



『帝国図書情報資産管理局ノ必要性二ツイテ』



『陸軍中将 尾鷲英樹』



新聞には、この間を彼が私達に向けた言葉を十倍くらい無礼にした内容が延々と綴ってあった。



特に昨日の事件に関しては辛辣で、総ての責任を私達フクロウと首相、それと警視総監長である立花宗一郎が負うべきである、と厳しく糾弾していた。



「まさか尾鷲まで引っ張り出すとは…本当に手が込んでいるな」



「陸軍…の人なんですよね?」



「そうだ。次期陸軍大臣の有力候補で、稀モノやフクロウのことをずっと蔑視しているんだ。以前にも少し話したが、鵜飼首相は私達フクロウの活躍に肯定的な方だ。ただ…尾鷲にしてみれば、本の保護なんかに費やす金があったら、もっと武力増強に励めということさ」



「知識と品性は期待出来なさそうな人ですね。
この文章も誰かに書かせたんでしょうか」



「ただ、他人を陥れるための頭はあるんだろうな。もしくは四木沼が持ち掛けたか…どちらにせよ厄介な事態になってしまった」



「……………」



「首相と警視総監にも申し訳ない。手を拱(こまね)いているのは辛いが、尾鷲に関しては正直…今のところ打つ手がない。昨日の事件も、おそらくは稀モノの影響に見せ掛けた狂言事件だ」



「(狂言事件…)」



「アウラが視えなかった、ということに関しては見間違いや例外もあるかも知れない。だが…立花を見て笑った、というのがな」



「勘違いかも…知れませんし」



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