第2章 新しい居場所-フクロウ-
おじい様は何も聞かずに、ただ優しい笑みで私の頭を撫でてくれた。たったそれだけのことだけど…すごく嬉しくて安心した。
こんな素性の知れない、どこの誰かも分からない人間を、帰る場所が見つかるまでの間、自分の孫として、家族として、この世界で生きることを許してくれた。
「(だからあの人には感謝してる。)」
「猿子はもう何の分野にでも精通しているんだが、ご覧の通り特に好きなのは民族学と鳥類学なんだ」
「そう!これは大好きな部族の希少なお面なんだ」
その鳥は本物ですか、と聞こうとした矢先。二羽が小さく羽根を動かした。
「このお面のこの彫り!色艶!素晴らしいと思わない?もちろん舶来ものだよ。手に入れるまで四年かかったからね、飾っておくのさえ惜しくて、こうして常に着けてるんだよ」
「…す、素敵なお面だと思います」
「はは、有難う。これをきっかけに君が色々興味持ってくれたら嬉しいなぁ。うちは専門的な学術書も充実しているからね」
「ああ、そうそう。彼女にも見せてやって」
「もちろんだとも。さぁ行こう」
そうして二人に促され
大きな扉をくぐると────。
「…凄い…!」
そこには膨大な本達が並んでいた。
総てがきっちりと整理され、棚に収まっている。
「(元の世界でも、こんなに大きな図書館は見たことがない…)」
「素晴らしいだろう?」
「はい」
「ここはね、この日本国で現在唯一の国立の図書館なんだ」
「そうなんですか」
『研究部の建物自体が
そこそこ貴重なものでな』
そこそこ、どころではない。
確かにこんな場所なら
安全を重んじる気持ちは分かる。
「一般ではなかなか手に入らないものも沢山ある。職員は自由に閲覧出来るから、時間のある時に色々読んでみるといいよ」
「…素敵です、是非」
ぐるりと辺りを見回す。
「(こんなに本が沢山あるなら
もしかしてこの中に…)」
「ここに稀モノは並んでないから、安心してね」
「!」
図星を突かれ、苦笑する。
「(もしかすると元の世界に帰る手掛かりが見つかるかもしれない…)」
「ちなみにここはね
一般の人も立ち入り出来るんだよ」
「そうなんですか?」
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