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たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第15章 恋文-ヤクソク-



「とは言っても、あの調子じゃ聞いても口は割らないだろうなぁ。私でも…立花が相手でも」



「……恐らく」



「まぁ滉のことは一度横に置いて、明日からの心配をしよう」



「はい…」



「ここに残る覚悟を決めてくれたのは嬉しいが、もし脅迫だとしたら再度狙われる可能性もある。『貴方にお会いしたい』ってくらいだし、な」



「…そうですよね」



「書店を回っている時にいきなり何か、ということは考えにくいから、この間のようにアパートの近くとか」



「はい、注意します」



「せめて、四木沼喬の目的がはっきりすればいいんだが…だからと言って、潜入はやはり許可出来ないなぁ」



朱鷺宮さんは苦く笑み、灰皿に煙草を押しつけた。



「猿子とも相談してみる。幾ら手紙を貰ったのが立花とは言え、これはもう個人の問題ではない。…縁起が悪いからこの手紙は燃やしてしまおう」



朱鷺宮さんは手紙を千切り、灰皿に落とす。



「……───この黒い羽根もだ」



闇色の羽根が、溶けるように炎に呑まれていく。それを眺めていた私の唇に、何故か映画館での感触がふっと蘇る。



「(…嫌ではなかった。)」



掠めたものが吐息であったとしても────唇であったとしても。



「("あいつ"に触れられた時とは全然違う…)」



「ところで…手紙に書いてあった"秘密"とは、何のことだ?」



「それが…分からなくて」



「『貴女の秘密を知っている』」



朱鷺宮さんは眉を寄せ、考える仕草をする。



「これがどういう意味なのか…。立花の秘密を知っている、という事だとは思うが…心当たりは?」



「…ありません」



悟られないように表情を崩さずに言った。朱鷺宮さんは何かを探るような眼差しでじっと私のことを見つめている。



「立花、君は私に何か隠し事はないか?」



「っ!」



突然の不意打ちを喰らい、心臓が激しくなる。



「いいえ…ありません」



「そうか…。悪いな、聞いただけなんだ。
だから…そんな怯えた顔をしないでくれ」



困ったように笑う朱鷺宮さんに、私は背筋がひやりとした…。



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