第2章 新しい居場所-フクロウ-
「…ここが」
センタギに着いた私はその建物を見上げた。
「想像してたよりも新しくて素敵な建物」
──朱鷺宮さんに誘われてから一ヶ月。
あれから、ずっと考えていた。
"読んだ者に影響を及ぼす本"
"『稀モノ』の存在"
"本が人を殺す"
そんな恐ろしい本がこの世界には存在する。読んだ者を死に誘う危険な本。ツグミちゃんの弟さんと鵜飼首相のご子息が読んだその本が『稀モノ』だった為に、彼らは自らの手で最期を終えようとした…。
「(…一つしかない命を稀モノなんかに奪われるなんて…悲し過ぎる。)」
だから目を背けちゃいけない。
"何も知らない"じゃ駄目なんだ
ちゃんと、向き合わなければ。
そして、救わなければいけない。
『稀モノ』に影響された人を
もう二度と…誰も死なないように───。
「(それが、ここに来た理由だ。)」
"知らない"を言い訳に逃げたくない。知らなければ何も分からない。
「(だから…頑張らなくちゃ。)」
そんなことを思っていると、アパートの中から見知った影が現れた。
「お!来たな!」
「朱鷺宮さん!」
「一ヶ月も連絡が無いからフラれたのかと思ったよ。有難う、来てくれて」
「(喋り方が違うような…?)」
「ん?ああ、喋り方か?この間のアレは外向きの喋りだ。私は普段はこんな感じだ」
あっけらんとした物言いに笑みが零れる。
「…そういえば、最初に見た時から思っていたんだが、珍しい瞳の色をしてるんだな」
「変、でしょうか…?」
「いやいや、綺麗な瞳だよ。空の色なんて素敵じゃないか。きっと制服によく似合う」
「あ、有難う…ございます」
褒められ慣れてないせいで、なんだかむず痒くなり、頬を紅く染め、頭を下げる。
「制服…どんなのか楽しみです」
「急いで仕立てさせてるんだが明日の朝になりそうだ」
「そうなんですね」
「荷物はそれだけか?」
「はい。事前に荷物はこちらに送らせて頂きました。おかげで鞄だけで済みました」
「鞄は持ったままで大丈夫か?」
「横掛けなので平気です」
「そうか。じゃあ、早速中を案内するよ」
「よろしくお願いします」
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