• テキストサイズ

たとえば君が鳥ならば【ニルアド】

第1章 空の瞳の少女-トリップ-



「お嬢様、失礼致します」



「どうぞ」



中から声を掛ければ、ドアを開けた使用人が一礼する。



「そろそろお時間です」



「今行く」



教科書とノートを持ち、使用人と共に部屋を出た。すると隣を並んで歩いていた使用人が朱鷺宮さんとの様子を聞いてきた。



「大事なお話をされていたんですか?」



「うん」



「随分とお綺麗な方でしたね」



「帝国図書情報資産管理局って知ってる?」



「帝国図書…長い名称ですね。うーん…詳しくは存じませんが、確か本を収集して保管する組織だったはずです」



「知ってたんだね」



「…お嬢様?」



本来の私の年齢と大差がない女中は帝国図書情報資産管理局の事を知っていた。あまりその名は知られていないとしても、そういう組織が存在する事くらいは知っておくべきじゃないだろうか。仮にも華族ならば。



「(本当に何も知らない…)」



悲しくなって切なげに笑う。



「その帝国図書の方がお嬢様に一体なんの用だったのでしょう?」



「私を勧誘したいそうだよ」



「勧誘!?お嬢様をですか!?」



「私も朱鷺宮さんに全く同じ反応を返したよ。何で私なんだろうって。もっと他に役に立つ人はいるだろうに。朱鷺宮さんが私をそこに誘った理由が分からない」



「では…お断りするんですか?」



「……………」



知らないままなのは…嫌だな



「おじい様に手紙を書きたいから便箋と万年筆の用意をお願い」



「かしこまりました」



それを聞いた使用人は笑み、頭を下げて立ち去る。



「知らなきゃ、この世界のことを。もう目を背けて知らないフリをするのはやめよう」



それにしてもフクロウか…



「!」



ふと、壁に飾られた大きな鏡が目に入る。



「っ!?」



そこに映る自分の姿にギクッと体を震わせた。ごしっと目を擦り、もう一度鏡を見る。



「(気のせい…だったのかな。)」



羽根が…生えてた



「…疲れてるんだな、きっと。」



自分にそう言い聞かせ、歩き出す。



「(でも…見間違いじゃなければ…)」



背中に生えてた白い羽根は



ボロボロに折れていた───……。



next…
/ 525ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp