第12章 謎の誘拐犯-キョウフ-
「お疲れ様!なぁ、もう昼飯食ったか?もしまだなら俺達と一緒にフラマンローズに行かないか?」
隼人の提案で私達はフラマンローズに向かった。
「初めまして!私は『帝都新報』の葦切拓真と申します!」
「(…新聞記者さん。)」
「初めまして、帝国図書情報資産管理局の鴻上滉です」
「初めまして、同じく帝国図書情報資産管理局の立花詩遠と申します」
「葦切さんは俺の先輩なんだ。一度みんなにも紹介したいなって思ってたから丁度会えて良かった」
「よろしくお願いします」
「先輩はさ、カラスのことを追い掛けてるんだよ」
「!」
「そう言えば先日、鴻上さんと立花さんをナハティガルの前でお見掛けしましたよ」
「もしかして、ずっとあの店を見張ってるんですか?」
滉が葦切さんに尋ねる。
「いやいや、偶然ですよ。毎日デスクにこき使われてるんで、そうそう張り込んでもいられません。それにあそこの警備は躾が行き届いててね、俺みたいなのがうろついてると追い払うんですよ」
彼はそう言って胸を張り、珈琲を啜った。
「…何か、カラスに関して新しい情報ってありますか?」
滉のその言葉に、隼人と葦切さんが顔を見合わせる。
「あるような、ないようなってところでしょうか」
「それは是非聞きたいです」
「実はですね、さっき道すがらに隼人にも話したんですが…議員が少し前に死んだんですよ」
「!?」
「先日の鴨池じゃないです、それはちょっとまた後で。あんた達には馴染みのない名前かも知れませんが、阿比清麿って貴族院の奴がいまして」
「(凄い名前…)」
「死因は公式の発表では心臓発作、場所が家の寝室だったし、歳も歳だったんで大きな騒ぎになりませんでしたが…何だか嫌な予感がして、そこの使用人にちょっと鼻薬をきかせたら、色々不審な話が出て来まして」
「不審な話?」
「寝室には常用していた薬が散乱していて、しかも枕元には本があったって言うんですよ」
「え……!」
「政治家となればそりゃあ苦労も多いでしょうから、『思いつめて』衝動的に多量の薬を服用してしまうこともまぁあるでしょう。そして…寝しなに本を読んでたってもちろんおかしくはない」
「……………」
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