第11章 相合い傘の温度-アメノオト-
──その日は、私がフクロウに入って初めての非番だった。そして気分は微妙に複雑だった。元の世界に帰る方法を探さなきゃと思うも、昨日の滉ことが何度も頭に浮かんでくる。
雑用を軽く済ませた後、まず図書館へ向かう。
「あら、えーと…貴女は確か探索部に新しく入った立花さんだったわよね」
「はい、こんにちは」
「今日はお休みなの?」
「そうなんです。それで少しこちらで勉強しようかなと思いまして」
「まぁみんな本当に真面目だこと。昼間は机も空いてるし、好きなだけ勉強していってね」
「有難うございます、ではお言葉に甘えて」
私は軽く頭を下げ、書架に向かう。
「(午前中はここで少し勉強して、午後は元の世界に帰る方法がないか、探しに出よう。)」
私は取り敢えず、星に関する本を引き抜く。手にした本は元の世界には存在しないであろう──『星の辞書』と題名づけられた本だ。
表紙がまず神秘的で綺麗。題名の『星の辞書』という文字は白字で、文字の線に沿ってラメのようなパウダーが塗り込まれており、キラキラと煌めいている。
奥深い星座や天体に関しての内容が写真とイラスト付きで載っていて、用語などの詳しい解説や豆知識もしっかりと掲載されており、買い取りたいくらい読むのが面白い。
「(さっき…『みんな』って言ってた。ということはきっと滉達もここに来てるんだ。)」
稀モノ探しをしないで趣味に没頭する。本音を言えば、少し息抜きがしたかった。色々あって頭の中がぐちゃぐちゃで、少し休憩が欲しかった。
「(素敵な夜空。星が散りばめられて目を奪われちゃう。こっちの月のイラスト…なんて神秘的で綺麗なんだろう。)」
一度、頭の中をスッキリさせて、また一から始めようと思った。元の世界に帰る方法、稀モノのこと、鴉のこと…。
全部が片付いたら…元の世界に帰ろうと思っている。まぁ…その方法が見つかれば、だけど。
「(帰るのは少し怖いな…。)」
お昼過ぎには出るつもりだったのに、読み耽っているうちに気付くと窓の外が茜色に染まっていた。
私は途中まで読んでいた『星の辞書』を借り、図書館を後にした。
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