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秘め事【イケメンヴァンパイア◆SS集・裏】

第8章 月夜【テオ→主人公】


右手が、ぴくりと動く。

その涙を拭いたいというかのように。

理性の及ばない衝動が、弾けんばかりに膨れていた。


「テオ………?」

思いつめたような彼の表情に、駄犬が思わず声をかける。

その声にはっとして、邪念を払うように首を振った。



惑わされるな。



頭の奥で、やけに冷静な自分が語りかけた。


これは伯爵のお情けで屋敷に身を置く鬼女、それ以上でもそれ以下でもない。


駄犬は心配そうにテオを見つめていた。

唇が、言葉をさがすように開いては閉じる。

その艶めいた唇が、謀らずも男を魅了している。


テオは胸の内で毒づいた。



『俺は、一体なにを考えてるんだ?』



風がふたたび吹き始める。

彼は無言のまま踵を返し、テオは足早に彼女のもとから去った。





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