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秘め事【イケメンヴァンパイア◆SS集・裏】

第8章 月夜【テオ→主人公】


風が冷たい夜だった。

ようやく画商としての仕事を終え、自室へと目指していた足取り。


今その予兆がなくとも、いずれ彼女を取り戻しに来るだろう。

伯爵の慈悲で招き入れてしまった鬼女。

故郷では見世物小屋の筆頭だったという『魔法』をかけられた災いの種。

それを思い、テオは深く息を吐いた。


ふと夜空を見上げると、月が青く光っている。

満月とまではいかないが、わずかに欠けた月はそれでも美しい。


― ―?


耳をかすめた、かすかな歌声。

屋敷の中庭あたりから響くその声は、月夜に染み渡るようだった。

哀愁げだが、どこか優しさをはらんだその声。


迷いながらも、テオは元来た道を引き返した。




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